日本初、そして未来志向のオーガニックキャンディー「CanWe?」開発ストーリー

飴・キャンディーの市場は今、大きな変化の波に直面しています。売り場の主役は機能性キャンディーやグミに奪われ、いわゆる飴玉のような「ハードキャンディー」は、厳しい立場に追い込まれてきました。とりわけ中小のキャンディーメーカーにとっては、研究開発や販促に潤沢な資本を投下できる大手企業との競争は容易ではなく、業界そのものが過渡期を迎えていると言えます。
そんな中、私たちはあえてこの逆風の中に飛び込み、新たな可能性に挑戦しました。
開発した「CanWe?」は、日本で初めて有機JAS認証を取得した“オーガニックキャンディー”です。構想から5年。数々の困難を乗り越えながら、2024年、ついにその第一歩を踏み出すことができました。
市場構造への危機感と、課題から生まれた企画
ハードキャンディー市場は、機能性・効能という「価値」で語られることが一般的になりました。「のど飴」や「マヌカハニーキャンディー」のように、健康に寄与する成分が入っていることが商品価値とされ、売り場の多くを占めています。その一方で、“お菓子としてのキャンディー”はグミに押され、その存在感を年々失いつつありました。
大手メーカーは資本を研究開発費に当てたり、グミに投資したりと有利に働けますが、大手メーカーと比較して資本の乏しい中小のキャンディーメーカーは非常に苦しい状況に追い込まれます。このままでは、飴という文化そのものが消えてしまうかもしれない――そうした危機感が、企画の原点でした。
しかし、ただ新しい味や形の飴を作るだけでは、未来は開けません。私たちは「持続可能性」というこれからの社会価値と、自社の“飴文化”を掛け合わせることこそが、中小企業として生き残る唯一の道だと判断しました。
オーガニックという選択肢にたどり着いた理由
私たちが「オーガニック」に着目したのには、いくつかの明確な根拠がありました。
まず、オーガニック食品の市場規模において、日本は欧米諸国に大きく遅れを取っています。たとえば、ドイツやアメリカなどの先進市場では、オーガニックはすでに一定の文化として根付いており、スーパーマーケットでも当たり前のように選択肢が並んでいます。一方で、日本における市場はまだ発展途上にあるとはいえ、確実に成長しており、私たちは、この成長曲線の先に大きな可能性があると確信しました。欧米では数兆円規模の市場規模がオーガニック食品でありますが、2022年現在日本の市場規模は1,500億円ほどで桁が違い、欧米のトレンドを追従する日本の市場でも有機の食品が必ず広がると考えておりました。
加えて、国の農政においても、有機農業の推進が掲げられるようになりました。「みどりの食料システム戦略」に見られるように、環境負荷の低い農業やサステナブルな食品へのシフトは、社会的にも政策的にも後押しされている状況です。つまり、“今このタイミングで始めること”が極めて重要であり、競合が少ない今だからこそ、市場を先取りできるチャンスがあると判断しました。
さらに市場調査を進める中で、日本国内にはオーガニックのキャンディーを製造しているメーカーが存在しないことがわかりました。つまり、もし製品化に成功すれば、「日本初」のオーガニックキャンディーになる――その意義と差別化の強さは、私たちにとって非常に大きなモチベーションとなりました。
仮に、「今あるハードキャンディー市場のうち、ほんの1%でもオーガニックキャンディーに置き換わったとしたら」という仮説のもと私たちは新しいチャレンジすることを始めました。
高い参入障壁と、あえてそこに挑む理由
オーガニック食品の世界は、決して簡単に参入できるものではありません。有機JAS認証の取得は複雑かつ厳格であり、原料調達も容易ではないため、価格競争には不利に働きます。実際、オーガニックの原材料は生産効率が低く、仕入れコストも高い。
そのうえ、2022年以降はロシアの戦争やスエズ運河の物流停滞、為替の急変動といった地政学リスクも、原料輸入に大きな影響を及ぼしました。
しかし、だからこそ私たちはこの市場に可能性を見出しました。大手企業が容易に参入できないこの“高い壁”が、逆に中小企業にとっては差別化のチャンスであると捉えたのです。
“健康・美容”ではなく、“環境”で語るオーガニック
多くのオーガニック商品が「健康志向」や「美容」を訴求軸にしていますが、キャンディーのような「砂糖の塊」は、そうした文脈では語りにくい商品です。そこで私たちは、まったく別の価値基準――すなわち「環境」への配慮を中心に据えることにしました。
オーガニックとは本来、化学農薬や化学肥料に依存せず、土壌や生物多様性を守る農業から生まれるものです。CanWe?では、化学農薬・化学肥料不使用の原料のみを使用し、原材料の栽培から製造に至るまで、地球環境への影響を最小限に抑える取り組みを徹底しています。

なんとかこの環境への配慮を”見える化”する必要があった中、従来のキャンディーと比較してどれだけCO2排出量が削減されているかがわかるデカボスコアに辿り着き、結果としてCanWe?は従来のキャンディーに比べてCO2排出量を44%削減することに成功しました。小さなひとつぶですが、環境への配慮としては大きな意志を飴で最大限表現していると思っています。
キャンディーはコミュニケーションツールである
私たちは創業以来、「キャンディーは人と人をつなぐコミュニケーションツール」だと考えてきました。会話のきっかけになり、感謝や労いを伝え、ちょっとした“お裾分け”として贈られる。その小さなひとつぶには、思いやりと優しさが詰まっています。

だからこそ、「CanWe?」という商品名には、キャンディー(Candy)という言葉に、「私たちにできるだろうか(Can we?)」というメッセージを重ねました。
その問いかけは、「環境を守りたい」「誰かを笑顔にしたい」「未来につながる選択をしたい」といった、期待と希望、行動を促す小さな原動力になればと願っています。
マーケティング戦略:共感でつながる小売との連携
CanWe?の販売戦略は、量販店での大量流通ではなく“価値観の共有”を大切にする小規模なオーガニックストアやセレクトショップへの導入から始めました。たとえば、環境意識の高い消費者が集まる首都圏や関西・福岡の独立系グロサリーストアに絞り込み、初期販売先として選定しました。

さらに、オーガニックに関心のあるマイクロインフルエンサーや、食と環境をテーマにするイベント等へのサンプリング提供など、共感を軸とした丁寧なコミュニケーション設計を行ってきました。
2025年には、都市型ライフスタイルに調和する百貨店や高感度セレクトショップ、海外市場への展開も視野に入れています。
「飴」で地球をよくするという挑戦
CanWe?は、小さな飴ひとつぶから、大きな問いを投げかけています。
それは「キャンディーにできることは、まだあるのではないか?」という問いです。

かつて、キャンディーは家庭のテーブルにあった日常の“潤い”でした。これからは、その存在価値を単なる味覚の喜びだけではなく、“未来を考えるひとつぶ”へとアップデートしていくことが、私たちの使命だと考えています。
万人に受け入れられる商品ではないかもしれません。しかし、価値観が多様化する今だからこそ、小さくても強い共感を生む商品が必要ではないでしょうか。私たちは、
CanWe?を単なるオーガニックキャンディーにとどめるつもりはありません。これは、未来に向けた対話の“はじまりのひとつぶ”です。
最後に:スタートラインに立つ覚悟

CanWe?の発売は、ゴールではなくむしろ、スタートラインです。 この取り組みが業界の一石となり、新たな市場と文化が醸成されることを目指しています。そしてなにより、私たち自身が飴という文化の可能性をもう一度信じ、小さくとも誠実な取り組みを重ねることで、キャンディーの未来を切り拓いていきたいと考えています。
「ひとつぶ分、世界をよくする」 この言葉を胸に、私たちの挑戦は続いていきます。